これでは、人びとの間で「頼りになるのは自分だけ」「自分の利益だけを考えていればいいんだ」
という内向きの心情が強まっていったのも当然というものだ。
 それに、通信手段の発達が、人びとの生き方に革命的変化をもたらした。
とくに「スマホ」の普及が、人びとの内向き指向に拍車をかけた。今や、「スマホ」でほとんどあらゆる情報を入手することが可能となり、
情報を得るために他の人や組織に依存しなくても済むようになったから、「自分だけ」の世界に没頭して生きてゆけるのだ

 「自分だけ」の深化は、選挙の投票率に端的に現れている。国政選挙の投票率は戦後ずっと低落傾向にあり、
最新の投票率は、衆院選だと平成29年の53・68%、参院選だと平成28年の54・70%である。
今や、国民の半数近くが投票所に足を運ばないのだ。民主主義の根幹が揺らいでいると思えてならない。

 バラバラの国民。孤立化を深める国民。
なのに、平成末期の政治は「ますます結束を固める保守政党対ますます細分化する野党プラス大同団結にほど遠い大衆団体」といった構図である。
令和時代になってもこの構図が続くのか、それとも別の構図に変わるのか。
少なくとも人びとが他者との連帯感を取り戻すよう願わずにはいられない。