ある雨の日、一人の男が家の中にいると、ドアを叩く音がした。出てみると警官だった。警官はこう言った。
「大雨で堤防が決壊し始めています。逃げてください。」
それに対して男はこう言った。
「私は神を信じています。神に祈れば、必ず神が助けてくれます。逃げる必要はありません。」
そう言うと男は祈り始めた。
   警官は去っていった。
まもなく堤防が決壊し、洪水が押し寄せてきた。
水が家の中にまで押し寄せてきたので、男は屋根に上った。
まもなく、救命ボートが助けに来た。
男は救命ボートの救助隊員に言った。
「神が助けてくれるから、私は大丈夫だ。」
男が祈り始めたので、救命ボートは去っていった。
しかし、どんどん水かさが増し、屋根を越えるまでになった。
男はあわてて煙突に登った。
まもなく救助のヘリコプターがやってきた。
救助隊員が、「早く、この縄ばしごにつかまって下さい」と言ったが、男は、「神が助けてくれるから大丈夫。」と言って祈り続けた。
ついに男は濁流に呑まれて死んでしまった。

あの世で神様の前に立った男は、神様に向かってこう言った。「神様、私はあなたを信じて祈ったのに、どうして助けて下さらなかったのですか?」
すると神様は、こうおっしゃった。
「私は3回もおまえを助けようとした。
 まず警官、次にボート、3回目はヘリコプターを送ったではないか。
 おまえが拒否したのだよ。」