ジェレミー・シーゲル著『株式投資の未来』によれば、1957年〜2003年末までの46年間で最も運用成績が良かったS&P500種構成銘柄は、
たばこ最大手のフィリップ・モリス(現アルトリア・グループ:MO)だったとのこと。

この間、S&P500種指数のトータルリターンは年率10.85%だったのに対して、フィリップ・モリスは同19.75%と市場平均を大きくアウトパフォームしました。
なぜ、このようなことが起きたのかと言えば、配当再投資による株数の増加が資産の拡大を手助けしたためです。


期間の終盤である1992年〜2003年末までのS&P500種指数は年率8.5%、配当再投資込みのトータルリターンは年率10.7%と、過去と比較して平均的な上昇率を維持しました。


一方で、1992年から2003年末までのフィリップ・モリスの配当再投資を含めない株価の値上がり益は、年率6.6%と、S&P500種指数をアンダーパフォームしました。

また、この間、フィリップ・モリスの株価は大きく乱高下しました。

@1993年4月、「マルボロ・フライデー」で株価は23%安と暴落。

当時、値上がりする「マールボロ」などのプレミアム・ブランドから、
それらの半値で買える一般・ブランドのタバコに切り替える喫煙者が増えたため、フィリップ・モリスは対抗措置としてマールボロの値下げに踏み切ったのです。
これを、投資家らが「ブランド価値の崩壊」と受け止めて狼狽売りに走ったのです。

とはいえ、93年の暴落はその後10年間にわたって続く訴訟リスクに比べれば、ほんのささいなものでした。

A1996年3月、ニコチンの中毒性を認識していたと、フィリップ・モリスの研究員が認め、株価が急落しました。

B1996年8月、フロリダ州の裁判所が米たばこ大手のブラウン&ウィリアムソン社に対して、警告義務を怠ったとの判決を下しました。これを受けてたばこ株が軒並み売られました。

C1999年2月、初の懲罰的損害賠償の支払命令が下ったことで、株価は一時44.4%安と暴落しました。

D1999年10月、集団訴訟でたばこ各社に初の賠償金一括支払い命令が下ったことで、株価はおよそ一年間で最大68.6%安と大暴落しました。

E2002年6月、米たばこ大手のRJRに1500万ドルの懲罰的損害賠償の支払い命令が下り、株価が急落しました。

F2003年3月、”ライト”系たばこの虚偽広告に対して101億ドルの支払い命令が下り、株価はおよそ一年間で最大49.2%安と大暴落。

こうした乱高下があったのにも関わらず、フィリップ・モリスは一度も減配しないどころか、ほぼ毎年増配しました。
結果、配当利回りが上昇したことで、
この間配当を再投資した投資家は保有株数を倍以上に増やすことができたおかげで、最終的にトータルリターンはS&P500種指数を上回ったのです。

このように、フィリップ・モリスのような連続増配高配当株への投資は、不人気で株価が低迷している時期に配当を再投資することで株数を増やし、
株価が回復するまで忍耐強く待ち、株価の反発とともにリターンを一気に上昇させるわけです。

とはいえ、多くの投資家が値上がり益ばかりに注目するため、配当を再投資込みのトータルリターンは軽視されやすいです。
そのため、連続増配高配当株はバカにされやすく、不人気な投資戦略であり続けることから、投資家には強い信念と忍耐力が求められます。