駅前に停まる古びたハイエース。
私はため息と共にスライドドアを開ける。

「オハヨゴジャマース」
『おはようございます』

もう見慣れたが、車内にはどこの国の空港だと錯覚するほどに、多国籍な顔触れが並んでいる。

そして走り出すハイエース。

私の名前はしんいち。最近、深夜の日払い工場勤務を生業に変えた。

車窓の外に流れるネオンと楽しそうな人々の姿。
私とは無縁の世界だ。

精神にも身体にも辛い半日を耐えれば、私の生きるべき世界=ギャンブルに身を浸す世界が待っている。
いつしかそれだけを楽しみに生きる毎日になってしまったが、後悔なぞ微塵もなく、むしろひとり没頭できる世界を持つことに誇りさえ覚えている。

日が昇るころ私は帰途に着く。
夕暮れまでのひとときの安息のあと、また闘いがはじまる。

私の生きるべき世界。その1日がはじまる。