『ポレポレ』と伊藤本(1)

ポスト伊藤の解釈参考書の中で人気が高いものと言えば『ポレポレ』と『透視図』である、と言っても異論はなかろう。
発行年度は『ポレポレ』が1993年、『透視図』が1994年と伊藤本でいったら『テーマ別』(1994)とほぼ同じ発行年である。

早速見てみよう。50題の課題文があり、見開き2〜4ページで解説が書いてある。2ページのものが多い。
課題文の長さは極力短くしてあるようで、真ん中が抜けているものがあったり、掲載部分直前のパートの説明が日本語で載っていたりする。

解説部分はほとんどが2ページなので「簡潔」と形容している読者が多いが、それは違う。
解釈書にありがちな単語解説がない。熟語や英文解釈の公式と言われるような構文解説も最小限である。
変わって文構造の解説が詳細を極める。それも「これこれこう云う文構造」といった結果の提示ではなく、
正しい文構造の把握を実際の英文から、「何に注目してどう考えるか」というプロセスをもっぱら重視して解説している。
この点同様のアプローチをしばしば行う伊藤本の解説に酷似している。
伊藤本以外にはこういうアプローチの本をあまり見かけたことがなかったので驚いた。
だが、伊藤本の二番煎じかと言えばそれも違う。メソッドが若干違う。それを解説しよう。伊藤式は初見の英文に対して積極的に予測を行う。
「次にどんな構造が出てくるか」を予測し、正しいと確認できればそのまま、違っていれば予測を修正し能動的に読んでゆく。
そして予測のための物差しを「ルール」という形でまとめている。骨格のデータベースが「パターン(S+V, [S+V], (S+V) の組み合わせ)である。