■勝ち馬を狙う

 孫氏が17年に設立した10兆円ファンドは、
世界中のスタートアップへの年間投資額に匹敵する規模だ。
次々と繰り出した投資は1社あたりざっと1000億円。
米ウーバーテクノロジーズのように1兆円規模の案件も存在する。

 まさにケタ違いだが、孫氏は共通項があると言う。
狙うのは株式非公開企業。
例外もあるが、スタートアップがターゲットになる。
投資するのは資金調達の「第3ラウンド」あたりだ。


孫氏は自らの手法を「群戦略」と呼ぶ。
投資を通じて企業の群れを束ねるからだ。
今に始まったことではない。
ただ、巨額投資の負の側面もある。
15兆円にも及ぶ有利子負債だ。
強気の孫氏も「さすがにこれ以上は増やせない」と認める。

 だが、これからソフトバンクが向かう波は
人工知能(AI)が起こす「人類史上最大のパラダイムシフト」。
もはや自社だけで負債を気にしながらの投資では群戦略を維持できない。
そこで国家も巻き込む巨大ファンド構想に行き着いた。

 大ばくちと評されることも多い孫流経営。
今年はどんな手を打つのか。
孫氏は涼しい顔で豪語する。
「ソフトバンクの本当の姿が見えてくるでしょうね。これからが本当の挑戦ですよ」。