大学生の頃、仲間内にバイト代をためて中古車を買った奴がいたので
福島まで一泊のドライブ旅行に行こうということになった

二日目は山の上の展望台へと車を走らせたが、景色はきれいで空いていて快適だった
しかし下りの途中で間違えたのか、人の背丈ほどの草が左右から迫った道を行くことになった
道は悪いし頻繁にキジが出てくるので、わーわー騒ぎつつ速度は抑えめで走らせていたところ、
急に左側から何かがドン!と当たって車が大きく揺れた

もしかして山に入っていた人と接触したかと急いで止めて
慌ててみな車から降り、通り過ぎたあたりの様子を見るため歩き出した
すると、さっきの左の草むらがガサッと鳴って、イノシシがのそっと出てきた
助手席の後ろに座っていたからか自分が一番先頭にいて、イノシシと見つめ合う形となった
怖かったんだろう、凄く大きく見えて、突進して来られたらお腹をやられるなと感じた
諦めの境地なのか、凄く静かに「あ、死ぬんだな」と思った

しばらく見合ったあと、イノシシは出てきた草むらにさっと入り消えたので
全員車に戻ってまた走り出したけど、その後自分はすっかり元気がなくなってしまい
仲間たちに励まされる始末だった

あの妙に静かな気持ちはあの時だけで、本当に忘れられない