「それじゃあ、本当の名前は何ていうの?」
「まったくありきたりな名前だよ、クラリス」
「どんな名前?」
「アルセーヌ・ルパン」
「アルセーヌ・ルパン?」
「そう、あんまりぱっとしない名前だからね、変えたほうがいいだろ?」

「あんたはどうなの?なに様だっていうのよ?さあ、手の内を見せなさい。あんたの正体は?」
「ぼくはラウール・ダンドレジーだ」
「ふざけないで!あんたの名はアルセーヌ・ルパン。父親はテオフラスト・ルパンといって(後略)」

「カリオストロ伯爵夫人」(ハヤカワ・ミステリ文庫、平岡敦訳)より