「アベノミクス」という政策はもちろん聞いたことがあるだろう。
しかし、実際にどのようなことをしていて、どんな結果がもたらされているか、
その先に日本の未来がどうなるのか、ということを理解している人は少数派かもしれない。

 アベノミクスの悪い話はあまり聞かない。むしろ、日経平均株価が上昇し、
就職氷河期と言われた数年前に比べ新卒採用が売り手市場になっていると聞くこともある。
生活の中であまり実感はないものの、少しずつ景気が良くなっている空気を感じてしまうのは、
私だけではないはずだ。

■アベノミクスを成す「三本の矢」とは
 安倍首相とエコノミクス(経済)を掛け合わせた「アベノミクス」。要するに、本書は日本経済の話だ。
経済と聞くと「難しい」と感じてしまう人が多いかもしれないが、
本書は何でも知っているモノシリ生物・モノシリンと太郎くんとの平易な対話形式で解説が進む。
そのため、一般的な経済関連の書籍に比べ、経済に親しみがない人でもわかりやすく、
読みやすい工夫が施されているのも特長だ。

 さまざまなデータ・客観的事実をもとに分析したアベノミクスの実態に触れる前に、
まずはアベノミクスの概略についておさらいしたい。
アベノミクスは“三本の矢”と呼ばれる政策の総称で、以下の3つのこと。
(1)大胆な金融政策
(2)機動的な財政政策
(3)民間投資を喚起する成長戦略
 第の矢と呼ばれる「大胆な金融政策」は、日銀が民間銀行にお金を供給し、世の中のお金の量を増やす政策。
お金の量が増えると相対的にお金の価値は下がり、物の価値、つまり物価が上昇する性質がある。
簡単に言えば、物価を上げる政策だ。

 これまでの日本は物価が下がり、企業の利益が下がり、従業員の給料が下がり、
購買意欲が低下するデフレ(デフレーション)の状態だった。
さらに、企業が商品をより多く売ろうとさらに物価を下げる。
例えば、牛丼チェーン店の値下げ合戦を覚えている人も多いかもしれない。
少しでも値段を下げ、牛丼を食べてもらっても、最終的に利益は下がってしまう。
しかし、他の競合店にお客を取られないよう、値下げの動きは止められない。この状態が長く続いてしまった日本。