たしかに、いわゆる「炭焼き」の作業というものは、窯に入れて着火してからも、存外、長い時間のかかるものである。
要はその待ち時間を“有効活用”する形で、当地の夫婦たちはセックスに励むというのが慣習として定着していたという。
そのため、炭焼き用の小屋が狭い範囲に複数存在する場所などでは、互いの営みが丸聞こえ&丸見えの状態になってしまうことも少なくないという。

「そうよ、なにせ山の中に入っちまえば、それこそ全部、自分たちの庭みたいな感覚なもんだから、そこいらでやっちまう。
だから自分らがナニをしているときに、うっかり隣近所の夫婦のナニを見たり聞いたりすることだってある。けれども、お互いに知らんぷりっていうか、見て見ぬふりを決めこむことになっていてね。
だからわざと知ってる連中に見せ付けるようにしてやったりさ、こっそりよその家のナニを覗きに行ったりしてね。
俺なんかの場合も、二軒先にべっぴんさんの嫁をもらった男がいたんだけども、その嫁さんのナニを見たい一心で、自分のカミさんそっちのけで拝みにいったものだよ(苦笑)
今でもあのべっぴんさんがね、ふだんは澄ました顔してるのに、あんな声だして乱れるっていうのが信じられないけれどね。乳も毛も丸出しでさ(笑)」

 ある意味、おおらかな時代の出来事であると言ってしまえばそれまでだが、それこそ、隣近所の夫婦たちと、相互鑑賞に近い状態で、野外セックスを満喫していたというのは、当世の我々からすれば驚くべき話。
やはりいつの時代も、男女の肉欲というものは、その熱量ゆえに、得てして不思議な習慣やルールを生み出してもらうものなのかもしれない。
(取材・文/戸叶和男)