一方の若いのは建材運びの激務に耐えきれず三ヶ月でやめていき、
手薄になった配送は慌てておっさんの移籍を要求してきた。
こんなかたちでおっさんが倉庫からいなくなるのか…と複雑な気分。
勤務時間は八時からだがおっさんは七時に会社に来てその日の荷物を確認すると、
自分でフォークリフト動かして積んでしまい八時には余裕の配送スタート。
今までは八時に若いハケンが倉庫に来て荷物出るまでウロウロだったから、
仕事の効率も格段に上がった。
ハケンは基本的に平日のみ勤務だが、おっさんは土曜日も仕事があれば喜んで出てくる。
稼げるから〜なんて言ってるけど体力がよく持つなあと感心した。
朝はゆっくりだし(七時に来てるのに)日曜休みだから(そりゃあたりまえだ)、
と言ってるんだが、つまりおっさんはすごいブラックで鍛えられてきたことを笑いながら語ったものだ。
さらにハケンの立場もわきまえてか、自分の息子みたいな新入社員にまで腰が低く「さん」付け。
若い社員にタメグチ聞かれて自分は敬語で返してるから、卑屈も通りこすと超人格者にしか見えん。

おっさんが三年の派遣期間を耐え抜き入社試験を優秀な成績で切り抜け中途採用される。
じつは結構いい大学を出てからある企業で支店長にまでなり、
しかし会社からは都合のいい奴隷、つまり名ばかり管理職になって鬱になって退社したとは人事部からの情報。
にこにこの裏側はそんな悲惨な世界だったのか。
おっさんはじぶんのあとから倉庫に入った別のハケンの中途採用も自分のことのように喜んでいた。

この中年二人の新しい人生に乾杯。