『深夜特急』ユーラシア編の、とあるシーンで主人公の沢木耕太郎が、
ムール貝を路上販売してる子供に、
ちょっとの間だけ店番しててくれと頼まれる場面。
沢木は店番というより、ただ立ってただけなのに、子供は「ありがとう、お礼にムール貝食べて」と売り物のムール貝にレモンをしぼって一つ差し出す。
沢木は遠慮しつつも食べる。
子供は「もう一つどうだい」とさらに差し出すが沢木は「ほんとにもういいよ、ごちそうさん」と、その場を後にする。

ムール貝しか売るものが無い男の子。
貧しいに違いないのに、お礼を忘れない。
相手に喜んでほしいから、そうしている訳ではないはず。
ただ単に、助けられた感謝をお礼として返した、だけのことだと思う。
なのに、なぜこんなに胸を打つんだ。