文理別大卒以上就業者年収比較

平均年収は、文系学部出身者が583万円で、理系学部出身者が681万円と、文系よりも約100万円高いものであった。
このデータの信頼性をみるためにも、以前に調査した文系卒業者の調査結果と比較してみた。
今回の調査の回答者の中から、文系学部出身者を選び、数学受験者と未受験者の平均年収を調べてみると、前者が636万円、後者が506万円と、
これまでと同様に、数学受験者の年収の方が高いという結果が得られた。
さて、理系と文系の比較に戻ると、25歳から60歳までの各年代のすべてで、理系の年収が高い。
また、文系は、所得の幅が大きく、理系の方が所得格差が小さいという結果が得られた。
次に、出身大学を入学難易度の高い順に、A、B、Cとグループ分けして、それぞれのグループの理系と文系の平均年収を比較してみた。
すると、グループAの理系の年収が最も高く、グループBの理系は、グループAの文系の数学未受験者の年収をすべての年代で上回り、
60歳の時点では、グループAの文系数学受験者を上回っていた。
グループCの理系は、グループBの数学未受験者を55歳以下のすべての年代で上回っていた。


更に我々は、慶應義塾大学によって収集された「日本家計パネル調査(JHPS)」データを利用して、2010年の12月に、理系学部出身者と文系学部出身者との所得差を再検討してみた。
JHPSは、制度・政策の変更に対する経済主体の行動変化を分析することを目的に、同一個人を継続的に追跡できるように実施された、高い精度の調査方法によるデータである。

その結果、男性のみに限ると、文系学部出身者・理系学部出身者共に約46歳の平均年齢で、文系学部出身者が559.02万円で、理系学部出身者が600.99万円と、
理系学部出身者の方が高い平均年収であった。
しかも、理系学部出身者の方が正規比率が高く、役職者比率は理系学部出身者の方が大きく上回るという結果がえられた。
この結果をどう説明するかであるが、先ず、理系が文転することはあっても、文系が理転することは稀であることから分かるように、理系の方が職業の選択肢が広いという事がある。
しかも、事務系より、技術系の方が、再就職し易いのは明らかであろう。
しかし、この調査結果を持って、日本の理系学部出身者が、十分に恵まれていると結論付けるつもりはない。
アメリカの場合、需要の高い専門家は非常に高い年収を得ている。
日本も、技術者の年収を、もっと高くしていかなければ、外国人の技術者を雇用するのが難しくなる一方、優秀な技術者が海外に流出することにもつながるであろう。