俺、4歳の時に母さんが死んじゃって父さんが1人で育ててくれたんだ。
父さんは俺が家で1人っきりになるのがかわいそうだからって早く帰宅できる会社に転職までしてくれた。
収入は落ちたと思うけど母さんの分の生活費がなくなったし保険金とかもあったのかな?生活に不自由は全然なくて楽しく暮らせてたんだ。
だけど中学に入って俺グレちゃってさ勉強とか全くしなかったし学校に行かないこともしょっちゅうだった。
それで学校からは何度も家に電話が来たし父さんが学校に呼び出されることもあった。だけど父さんは一度も俺を責めたりしなかった。学校の先生が俺のことを悪く言った時は怒ってくれた。いつも俺のことを想い信じてくれてたんだ。
だけど、中学生だった俺は改心したりすることはなくてとりあえず高校には行ったけどそれは誰でも入れるような高校で高校に入ってからも中学と変わらないような生活をしてたんだ。
そんな高1の冬事件は起きた。
俺が中学に入ってからは父さんが仕事から帰る時間も遅くなってて深夜に帰ってくることもたまにあった。その日は父さんがなかなか帰って来ず今日もそんな感じかあと思っていた矢先に家の電話が鳴った。何だか嫌な予感がして受話器を取ると病院からの電話だった。
電話の内容は職場で父さんが急に意識を失って倒れて病院に運ばれてきた、というものだった。
俺はそれを聞いた時めちゃくちゃ焦った。父さんが死んでしまうのではないかという恐怖に襲われた。
その時、今まで自分がどれだけ父さんに愛されてきたのかということに気がついた。絶対に父さんを失いたくはないと思った。
父さんは脳卒中だった。職場、病院の先生たちのおかげで何とか一命を取り留めた。俺は脳卒中について調べてみたが三大死因の一つで発症後一年以内に二割の人が死んでしまうということがわかった。
考えたくはなかったが父さんはもしかしたらあと一年で死んでしまうかもしれないと俺は思った。
俺は今の自分を振り返って、父さんの中の俺がこんな姿のまま死んで欲しくはないと思った。
立派になりたいと思った。だから俺は医者になることを決意したんだ。父さんに立派な俺の姿を見せて恩返しをしたい。それに他の人たちに俺が感じた親しい人を失うかもしれないという恐怖を感じて欲しくないと思った。
父さんはずっと俺のことを想って信じてくれた。そんな俺にできないことはない、そう思って勉強を始めた。中学校の知識さえもおぼつかない俺には高校の勉強はすげー大変だったけど俺は自分の力を信じて頑張った。
そして俺は医学部合格を果たした。父さんも闘病生活を頑張ってくれてまだ仕事に復帰とかはできないけど身の回りのことができるまで回復した。
俺が医学部に合格した時は父さんはめちゃくちゃ喜んでくれたよ。リハビリや薬は辛かったけどお前の頑張りを見ていたから父さんも頑張れた、って言ってくれたときは涙が出るほど嬉しかったな。

きっかけがあれば人は変われる。みんな頑張れ。