謂れのない圧力の中で ある教科書の選定について 和田孫博
http://toi.oups.ac.jp/16-2wada.pdf
(灘高校の偉い人により書かれた記事)

 本校では、本年四月より使用する中学校の歴史教科書に新規参入の「学び舎」による
『ともに学ぶ人間の歴史』を採択した。本校での教科書の採択は、検定教科書の中から
担当教科の教員たちが相談して候補を絞り、最終的には校長を責任者とする採択委員会で
決定するが、今回の歴史教科書も同じ手続きを踏んで採択を決めており、教育委員会には
採択理由として「本校の教育に適している」と付記して届けている。
 ところが、昨年末にある会合で、自民党の一県会議員から「なぜあの教科書を採用したのか」
と詰問された。こちらとしては寝耳に水の抗議でまともに取り合わなかったのだが、年が明けて、
本校出身の自民党衆議院議員から電話がかかり、「政府筋からの問い合わせなのだが」
と断った上で同様の質問を投げかけてきた。今回は少し心の準備ができていたので、
「検定教科書の中から選択しているのになぜ文句が出るのか分かりません。
もし教科書に問題があるとすれば文科省にお話し下さい」と答えた。
「確かにそうですな」でその場は収まった。
 しかし、二月の中頃から、今度は匿名の葉書が次々と届きだした。そのほとんどが
南京陥落後の難民区の市民が日本軍を歓迎したり 日本軍から医療や食料を受けたり
している写真葉書で、 当時の『朝日画報』や『支那事変画報』などから転用した写真を使い、
「プロデュース・水間政憲」とある。それに「何処の国の教科書か」とか「共産党の宣伝か」とか、
ひどいのはOBを名乗って「こんな母校には一切寄付しない」などの添え書きがある。
この写真葉書が約五十枚届いた。それが収まりかけたころ、今度は差出人の住所氏名は
書かれているものの文面が全く同一の、おそらくある機関が印刷して(表書きの宛先まで印刷してある)、
賛同者に配布して送らせたと思える葉書が 全国各地から届きだした。文面を要約すると、
「学び舎」の歴史教科書は「反日極左」の教科書であり、将来の日本を担っていく
若者を養成するエリート校がなぜ採択したのか? こんな教科書で学んだ生徒が将来
日本の指導層になるのを黙って見過ごせない。即刻採用を中止せよ。というものである。