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以下、社内報より。


【26歳、突然の旅立ち 】

私の隣にポッカリ空いた席。そこにはもう、君のはにかんだ笑顔や、叱られて背を丸めた困惑顔を見ることはできない。
北欧での留学生活で培った語学力を駆使する間もなく君は突然旅立ってしまった。
趣味の鉄道ネタを書く姿は生き生きと輝いていた。
企画記事の出来栄えをほめると、照れながらも満足げにほほ笑んでいた。
新人とは思えないきめ細かな取材。食い入るように記者端末を見詰め推敲する真剣なまなざし。

わずか四ヶ月の間に、先輩記者が驚くほどの成長を見せた。
さらに一皮むければ実力派の記者に育つだろうとの期待は、もはやむなしくなった。
北の大地で君は何を思い、酒を飲んでいたのか。
膝を交え今一度、問いかけたいと、切実に思う。
冥福を祈る。
心から。
すべてに至らぬ先輩であった私は今、この言葉を繰り返すのみである。