ところが、2012年からカラーへのロイヤリティー支払いが滞りはじめ、分割払いの相談がありました。
ガイナックスの経営がまたしても悪化していたのです。山賀社長(当時)と武田(康廣)取締役が直接来社し、その提案を受け入れました。

そして2014年になると、さらに融資を頼まれました。

まだ大きな金額が返済されていない状態なのに、
武田さんから「あと3日のうちに1億円貸してくれ」といきなり懇願されたのです。
そのお金がないと「もうつぶれるしかない」とまで言われたので、大急ぎで1億円を用立てました。

 そんな経営状態の会社に『エヴァ』の権利をいつまでも預けておくことに危険を感じて、
ガイナックスにあずけていた『エヴァンゲリオン』の商品化窓口やロイヤリティーの分配の業務の移譲を1年前倒しにすることを条件としました。

 もともと段階的にカラーに戻すことになっていたのですが、ガイナックス側の希望で先送りにしていた案件です。
その条件以外は、計画通り返済されれば無利子・無担保での融資としました。

そんな条件で会社のお金を貸すわけですから、自分でも「経営者としてはどうなんだ」とあきれるような判断です。
しかし学生時代からの友人ですし、アニメーション業界の一員として苦しい会社を支援したいという気持ちからの融資でした。
長い間お世話になった会社への恩返しの意味もありました。

 少しでも経営が楽になればと、2014年にカラーの主要スタッフに関わりの大きい
『トップをねらえ!』『トップをねらえ2!』『フリクリ』の原作権の買い取りも山賀社長(当時)と武田取締役に申し出ていました。
その状況下のガイナックスでは新作の制作は困難でしょうし、作品の将来も考えてのことです。

 当初は山賀社長も喜んでその話を進め、買取条件も固まりかけていたのですが、
ある日突然、当初の6倍になる高額の買取価格を提示されました。