スタッフのモチベーションを維持する方法


――監督もその立場からスタッフのモチベーションをどう保つかを考えるんですね。

水島:スタッフのモチベーションはフィルムにそのまま反映されますからね。
スケジュールの面などでスタッフの置かれた状況が良好でない作品の時は、ハードルを低めに設定することも大事なんです。
 もちろん作品としてちゃんと形にすることは変わりないです。
でも、クオリティというのは青天井ですから、状況を無視して理想的なクオリティを求めようとすると「できなかった」という結果ばかりになってしまう。スタッフのテンションも下がりますよね。
「第1話は理想に近づけるように頑張る」。そして「やればできる」というムードを作ったうえで、第2話以降はしばらくハードルを下げて状況に合わせた内容で進めていく。
これは脚本段階から不自然に見えないように仕込んでいくんです。
 そうするとモチベーションも下がりにくいし、第1話を見ておもしろそうだと思ったアニメーターが途中参加してくれたりして、だんだん現場が温まっていったりするんです。

――お話を聞いていると、監督がスタッフとコミュニケーションを取ることの重要性を感じます。

水島:監督というとカリスマ性のある独裁者みたいなイメージを持っている人も多いかもしれません。
でも、カリスマ性でもって作品をつくれるのは、その人と時代が合致したその瞬間だけなんです。
 それ以外の時はやはり丁寧に制作現場をフォローしながら、ディレクションしていくしかありません。
それはつまり、ディレクションの結果出てきた成果物がフィルムにちゃんと反映されるのを示すことに尽きると思っています。
そういう意思疎通がないとスタッフはついてきてくれない。
 かっこいいテーマだけを語ったり、上がってきたものにただ文句を言うだけで素晴らしい作品になっていくなんてことはあり得ないんです(笑)。
僕は監督作でコミュニケーションを題材にすることも多いですが、それは制作現場でも同じことだと思います。

――ありがとうございました。


“考えさせる”と“悩ませる”は違う|水島精二監督
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9458


デヴ水島「現場がクソなら相応のクオリティに仕上げるのが監督の仕事」