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 日本屈指の“宗教都市”が奈良県の天理市だ。同市の一等地には「天理教」の教会本部や、地方からやってくる信者が宿泊する詰め所が点在する。
こうした土地・建物は、宗教法人法に定められた〈宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成する目的〉で使われる場合、固定資産税が非課税となる。

 天理市では、天理教の施設が非課税だと失われる税収が多いこともあり、教団が市に多額の寄付をしてインフラ整備等に貢献し、共存を図ってきた。

 ところが、かつて40億円を超えた市への寄付は平成に入り15億円程度に。2013年に現市長の並河健氏(42)がトップとなると10億円を切る。2020年度は、3億円まで落ち込んだ。

「コロナ禍で教団の財政が圧迫され、寄付が来年度はゼロになるとも囁かれている」(天理教関係者)

 市と教団の関係が大きく変わりかねない話だ。並河市長に話を訊いた。

「来年度について天理教本部と議論していますが、少なくともゼロになる状況にはありません。確かにコロナで参拝者が減ってお供え収入も減り、
現行額の維持が難しいだろうとは見込んでいます」

 寄付金である以上、市は額を定められず、また強要もできない。

「ただ、寄付金だけが市と天理教の協力関係ではない。スポーツや文化の面では天理教、天理高、天理大の存在で市が発展してきた。
今後より協力関係を厚くしていこうと話しています」(並河氏)

 だが、寄付金減少に危機感を募らせ、「寄付より納税」を求める声も出始めるのではないか。天理市選出の奈良県議・岩田国夫氏が話す。

「都市計画も整備されてきたこともあり、これまでのように天理教の提示する寄付をそのまま受領する関係性は時代にそぐわない。
市長には『現状は非課税の宗教施設であっても、課税対象に見受けられるものを市が精査し、その精査に基づいて寄付金について
協議を重ねることが必要』と提案してきました」

 寄付額がゼロになる可能性を天理教の渉外広報課に確認すると、「お答えは控えたい」とするのみだった。宗教都市の市政が、曲がり角にある。