今月初旬、横浜高校のグラウンドで、シート打撃が行われていた。
実戦を想定して走者を二、三塁に置き、打者が順に打席に入る。
ごく普通の練習メニューだが昨年までと違う点がある。
走者の位置だ。一、二塁に置くのがチームの慣例だったが、選手たちの発案で変更した。
より緊張感ある場面を想定することで集中力を高め、どういうバッティングをすべきか、
一人一人が考える狙いがある。
投打に高い総合力を見せ、昨秋の県大会を制した横浜。
秋の公式戦のチーム打率は3割5分を超えた。
だが、打撃陣はこの冬、自分たちを根本から見つめ直し、得点力の向上を目指す意識改革を進めている。
きっかけは昨秋の関東地区大会で春日部共栄(埼玉)に大敗したことだった。
エースの及川雅貴投手(2年)は連投の影響もあり不調で、チームは試合の流れをつかめない中、
攻撃が単調となり好機をつくることもほとんどできなかった。
この反省から選手たちは、どうすれば点を取れるのか、話し合いを重ねた。
甲子園に出場した昨夏の打線には、万波中正選手や長南有航選手のような一発長打で局面を打開できる
「長距離砲」がいたが、今の打線にはいない。メンバーは1年生も多い。
こうした現状認識を踏まえ、たどり着いたのが「つなぐ意識の徹底」だったという。
練習メニューのアイデアも出し合った。例えば、ピッチングマシンを使った打撃練習で緩い球を封印。
確実性の高いコンパクトなスイングで速球を打ち返す練習を繰り返す。
さらに、これまでは試合でほとんど使わなかったヒットエンドランのサインプレーを磨こうと、
練習メニューに積極的に取り入れた。
昨夏の甲子園を経験した小泉龍之介選手(2年)は、当時の打線との違いを「今は長打を狙わずヒットで
つなごうという意識が高い」と説明する。
自身も「ぼてぼてのゴロでもいいから、ボールに食らいつけば何かが起こる」と考えるようになったという。
中軸を担う冨田進悟選手(1年)は自戒を込めて、「大事な場面でしっかり打てる打者」との目標を掲げる。
平田徹監督は「安定感」をキーワードに挙げ、「甲子園を勝ち抜く上では、コンスタントに力を発揮する
打者がそろう打線の方が強い」と語る。
選手たちとは「とにかく勝ちにこだわろう。
そのためにチームバッティングに徹しよう」と話し合ったという。
意識改革から得点力の向上を図る横浜打線。内海貴斗主将(2年)はセンバツを見据え、こう意気込む。
「どうやったら点をとれるのか、いろいろと考えてきた。『長打がなくても得点できる野球』を見せたい」