星稜の「逆転サヨナラ敗北」にみる、甲子園で勝てる監督の条件
「できる」という信念が道を切り開く

 そういう意味では、同じように、この試合で大逆転劇を演出した済美の監督・中矢太も不思議な力があった。
「3回裏に6-1になったとき、イーブンになった気がしたんですよね」

 そうは言っても、まだ5点差である。一瞬、あまりの突拍子もない発言に戸惑った。その後、質問を重ねても、手ごたえのある答えは返ってこない。
要約すれば「なんか」だという。だが、その不確かな感覚の中には、中矢にしかわからない無数の要因があったのだと思う。

 中矢は明徳義塾の出身だ。つまり名監督の馬淵史郎の教え子でもある。中矢は言う。

 「馬淵さんに野球を教えてもらって、とんでもないもんなんやと思った。それまでは投げて、打って、走ることしか知らなかったので、野球とはこんなに奥深いのかと」