古巣・横浜高(南神奈川)の夏の県3連覇は立派。
4番の万波中正(3年)が復活。横浜スタジアムの最上段へ特大弾を放つなど
南神奈川大会は高校通算40号となるチームトップの2本塁打、12打点でチームを牽引。
190センチ、89キロ。父はコンゴ出身で身体能力は抜群。
同じハーフ選手のオコエ(現楽天)と比べてもパンチ力は万波の方が上。
オコエより足は遅いが、遠投105メートルと強肩。

2年前に横浜スタジアムのバックスクリーンへ放り込み
スーパー1年生として衝撃的なデビューを飾ったが、その後は伸び悩んだ。
年明けには、レギュラークラスにだけ許される寮生活が剥奪され
都内の自宅から片道90分かけての通学を強いられるようになった、と新聞では報じられている。
しかし、寮から出されたのは、レギュラーを外されたからではない。
野球に取り組む姿勢、私生活も自覚が足りないと、平田徹監督(35)にペナルティーを科せられた。
つまり干されたのである。
今春は不振も重なり、メンバー落ち。春の関東大会も当初はメンバー外だった。
ケガ人が出たため、何とか開幕直前にベンチに滑り込んだものの、守備固めとして出場したほどだ。

ただ、打撃フォームは試行錯誤を繰り返した。
ノーステップ打法をやめ、足を上げるようにして良くなった。
ボールの下にバットを入れながら、上から叩けるようになったことで打球が飛んでいく。
平田監督は夏を前にペナルティーを解除した。
南神奈川大会は背番号13ながら、復調したことで4番にも復帰させている。

指導者として難しいのは、干した選手をいつ戻すかだ。
万波は夏の戦力として必要不可欠な選手との判断は当然、あっただろう。
本人も「個人よりチーム」と考え方が変わったようだ。
突き放されたことで大人になったなら、「荒療治」は成功といえる。

投手としても147キロ。
エースの板川(3年)、最速152キロの及川(2年)の2枚看板はいずれも左腕だけに
相手は対策を練りやすい。右のパワー投手の万波がいるだけで右対策も必要になる。
重要な役割なのだ。

プロで勝負するなら、甲子園で一線級の投手をどう打つか。
スポーツ紙は1面で騒ぐが、現時点では、ドラフトにかかっても下位指名だろう。
オコエのように甲子園でさらに成長することが、横浜高の上位進出はもとより
自身の指名順位を上げることにもつながっていく。

(小倉清一郎/元横浜高校野球部部長)