>>911
江口孝義(元ダイエー)は、大会前から評判の好投手だった。
当然、大八木は県予選のビデオを入手して見たが、「低めには
くるが、そんなに速くはない。これなら打てる」と判断した。しかし、
いざ試合になって、初回にベンチに戻ってきた打者に聞くと
「ボールが見えません」と言う。たしかにベンチから見ても、すさまじい
ボールの伸びだった。148キロが出ていたという。わずか4安打。
しかも無四死球。スクイズで1点を取るのが精一杯だった。

「あれは高校生が打てるボールじゃなかった。ビデオの弊害が出た試合でした。
映像というのは、撮る角度もあって、実際よりも遅く見えるものなんです。
それで勘違いしてしまった。一つ勉強になりましたよ」

永遠の球児たち―甲子園の、光と影
第7章 頂点に立てなかった名将―東海大甲府・相洋/大八木治監督