809 名無し草 sage 2023/07/17(月) 18:16:56.71
高橋自伝 2000daysより

僕がいなくても誰も求めていないだろう…。
ここ最近はその思いが強くなった。
特に結弦(羽生選手)の存在が大きいと思う。成績の勝ち負けだけではなく、
観客や会場を巻き込む、あの目を惹く結弦の魅力には負けても仕方ない、といつしか思うようになってしまっていた。

以前なら、絶対にそこだけは誰にも負けたくないと思っていたのに、
ソチの2シーズン前あたりから、越えられない壁のような、あいつになら負けても仕方ないか、
という気持ちがどんどん大きくなっていった。
負けず嫌いが大きくなるはずが、どんどん客観的になっていく。「俺は求められていない」という思いが
ソチに向けて強くなり、しんどくなっていた。それがモチベーションの低下にもつながった。

僕はアウェイが苦手で、応援されている!と実感できるホーム感が、モチベーションのポイントでもあった。
確かに大勢の人に応援されていることはあったけれど、どこかその応援は無理されているのかな、と、
応援すら素直に受け止められない自分もいた。

ホーム感ですら疑ってしまう。無理して拍手しなくてもいいよ、
これだけスタンディングオーベーションの人はいるけれど、何か違う。
果たして本当に心から立っている人はどれくらいいるのだろうか。お情けじゃなくて、正当な評価なんだろうか…。

12-13シーズンからそんな感覚を抱き始め、ソチのシーズンになると、結弦だけではない、
樹(町田選手)も飛躍してきて、観客を盛り上げる演技をしていただけに、ずっとその思いを抱え続けていた。

僕にとっては、成績として一番になることよりも、その空気の中でどれだけの人に強く求められるか、認められるかが大事。
なのに、ソチのシーズンは、その負けず嫌いが発動しにくくなっていた。
勝てる希望、可能性があれば負けず嫌いを発動できる。でも明らかな差を感じたら勝とうと思えない。諦めてしまう。

その頃の僕は、もう勝てる可能性を感じなくなって、それが試合の中でどんどん積み重なって、頑張れなくなっていた。
もうあとは惨めになるだけだろうな。
求められていない、俺いなくても別にいいだろう…そういう思い込みも、引退を加速させたと思う。