(前略)ただ、1000万円の損害賠償となると、おいそれと支払える金額ではない。そのため「書き込んだことは認めるが、損害賠償金が高額すぎるので折り合えない。支払う意思はある」とするのが、「加害者、被害者側、双方にとってもベストではないがベターチョイスだ」(同)と言う。

裁判所から訴状がユウジさん宅に届いた。被告として名前が挙がっているのはプロバイダー契約者である妻と、自分だった。訴状を見ると、「かなり自分のことを調べられているなという印象を持った」(ユウジさん)と同時に、相手方はどうやって自分が書き込んだことを立証するのか、疑問がふつふつと湧いてきた。

しかし民事訴訟の場合、このケースでは、「自分が書いていない」ことを立証するのは相手方ではなく、ユウジさん自身である。ネットトラブルで、「お前が書いただろう」と言われて、これを否定するための証拠を揃えるのは訴えられた当人なのだ。ここが刑事事件との大きな違いだ。

「さすがに訴状や裁判所からの呼び出し状が届いてからは、『本当に今まで相談してきた年配の弁護士でいいのか?』という不安も出てきました。結局、あれこれネットで検索して、ネット問題に詳しい弁護士に急いで相談に行きました」(ユウジさん)

ネット問題も手掛ける若い弁護士によると、ユウジさんの状況は極めて不利であることと、妻については責任は回避されるだろう――との見通しが示された。

「確かに私が書いたことです。でも、その女性上司も悪評のある人だったので、それを裁判の場できちんと伝えれば、裁判所も納得し、女性上司側も理解するのではないかと思いました」

だが、その見通しはあまりにも甘過ぎた。本格的に裁判が始まり、女性上司側がかなり怒っていることが伝わってきたからだ。

加えて相手方の弁護士が作成したであろう書面を見ると、とても、「自分が書いたものではない」という気力すら沸いてこなかった。証拠こそないものの、とても論理的に、「誰が見ても、聞いても、自分が書いたもの」と説得力のある文章で裁判所に訴えている。もちろん、ユウジさんにはこれを覆す証拠がない。当時を振り返りユウジさんは言う。

「実際、私にとっては信頼できる同僚からの話を書いただけだ。それが真実だと思った……と話したところで、相手側はまったく聞く耳を持ちません。そうしたやり取りが続くなかで、もう裁判をやめてしまいたいという気持ちになりました」

もっとも、相手の女性上司は、会社側に「裁判をしていること」を伝えはしても、その相手が自分であることは報告する様子はなかった。ただ、それもいつまで続くやわからない。

「私の弁護士からは、『和解しますか』『あなたは書いていないが、あなたの家族が契約しているプロバイダーが発信元だったので、その解決を目指すために和解するという交渉をしましょうか』と言われ、裁判中ではありましたが示談交渉をお願いしました」

そうして、ユウジさん側の弁護士が女性上司側の弁護士と連絡を取り、交渉の末、提示してきたのが「自分が書いたと認める謝罪文と、二度と書かないという誓約書の提出」を行えば、「損害賠償金500万円で折り合う」という和解案だった。(後略、全文は以下のリンクで)



ネットで誹謗中傷、損害賠償300万円支払った人の本音…「恨みだけが残った」
https://biz-journal.jp/2021/04/post_220438.html