古尾谷の死後、妻・鹿沼が語ったところによれば、
1980年代後半、アイドルが主役のドラマや映画が主流となり、
1990年に入るとバブル景気を背景にトレンディドラマがブームになる中、
古尾谷はあくまで硬派な役柄やシリアスな役柄などにこだわり、
仕事を選ぶようになった。
またキャリアを積む中で報酬単価も上がり、起用する側も古尾谷を敬遠するようになった。

その影響で仕事が減り、一日中家にいることも多くなり、昼間から酒浸りの生活になった。
また収入が激減したことで、
住民税や1億5000万円で購入した自宅マンションのローンなどの支払いが滞るようになり、
鹿沼も近所のスナックでアルバイトをしながら金策に奔走し、返済を進めたが、
結果的に借金は3億円にまで膨らんだ。

そうした状況下で実父の遺産相続を巡って継母との係争問題が表面化した。
元々洗面所でいつまでも手を洗うほどの潔癖な性質に加え、
こうしたさまざまな焦燥感によるストレスと昼夜逆転の荒んだ生活などから
精神的に不安定な状態が顕著となり、
鹿沼に対して顔面に重傷を負わせるほどの暴力に及んだかと思えば、
逆に突然鬱状態に陥り「舞台で死ねたら役者として本望」
「自分は必要ない人間じゃないか」と悲観的な言葉を発するようになるなど
不安な日々が続いていた矢先の悲劇だった。