いいえ、私が本当に言いたいのはこれからなんです。
いつかあの警部さんは相続欠格の規定を説明しましたね。でも一人だけ遺産を
もらえる人がいたんです。
「ただし殺害者が自己の配偶者もしくは直系血族であった時は、この限りではない」
つまり、殺害者である摩子ちゃんの直系血族であるおばさまは、遺産相続に支障を
きたさないんです。このただし書きを発見した時、あなたが浮かび上がってきたのです。
遺伝子工学の研究の完成しか眼中にないあなたは、研究に反対する会長をなき者に
しておばさまだけに遺産が入るようにはかった。おばさまの財産なら、あなたには
わが物同然ですものね。
あなたが殺したんでしょ? 凶器の果物ナイフはあなたの手からおばさまへ、
おばさまから摩子ちゃんへリレーされたんですね。