そんなことより、あたし帰宅時に斜めに降る雪を

顔に浴びながら連想して脳内に浮かんだシーンを

なかなか追い払えなくて困っていんのよ、



松野俊治が布を巻きつけた感じの
ワンピースドレスを着ていんのよ、
紫と黒が混じった感じの、


そんで松野俊治の代表曲である、壮大なバラードの前奏が始まんの、
「難破船」や「昴」みたいなものを想像して頂戴、
「愛のままで」でもいいしね、
レコーディングバージョンよりも長めの前奏なのよ
わざと静かーな感じで始めてからガーッと盛り上げて、
またじらし風に静かに戻るの、

その間、松野俊治はマイクスタンドの前で
口を突き出し気味に、目は半閉じで
曲にあわせた表情して演技してんの
陶酔っていうか入り込んでるっていうか
「これから名曲歌うアタシ、」に酔ってるの


この先は言う必要ないわね、
歌は始まらないのよ、
ずっと前奏が続くのよ
キレるのも捨てがたいけど、
あたしの理想としては、
ときどき不安と疑念を顔に浮かべながらも
ちょっと顎を上げたり片手を腹にあてたり
斜め右下を見たり、
永遠に浸って演技を続ける松野俊治なのよ