「Goの悲劇」

大変なことが起こった。
今日銭湯行ったんです、銭湯。で、上がって着替えてるときにズボン落としてポッケからGoちんが飛び出したんです。
丁度横に初老の親父がいたんですけど、それをチラッと見たんすよ。
その時、胸が原因不明のキュンキュンに襲われて苦しくなっちゃたんです。
1秒後には原因わかったんすけど、なぜかって俺が落としたのをその親父はスマホだと思ったろうなと。
俺が落としたのはPSPGoなのにその親父は「なんだ、スマホか」ってね、こう思っただろうなと。

屈…辱……ですよね。俺が落としたのがPSP3000か3DSだったら「なんだ、ゲームか」ですよ、きっと。
それがGoだったばかりに、こんな、こんな… 己の存在すら認めてもらえないような… こんな… うっ
その親父が小説家だとしたら今日のこと「少年がズボンを落とすと、平成式黒林檎電話が飛び出しけり」って書いちゃうんすよ。
その小説が300年後の教科書に載って窓際の席に座った田中健吾くんが鼻くそほじりながら読むかもしれないんすよ。
Goなのに!テストで「少年が落としたものはなにか」って問われて「勿論PSPGo」って書いたら勿論ペケ×。
嗚呼っ…! っとここまでが少年がPSPGoを私の横で落としてそれを拾うまでの私の幻想である。
私は一言言いたかった。「私にはわかっているよそれはPSPGoだろ?スマホと勘違いなんかしてないよ」と。
しかし言えなかった、親が普通のPSPと間違えて買ってきてその子は劣等感を抱いているのかもしれないのだ。
「いいもの持ってるね」と一言言ってあげたかったのに。割れたGoをSONYが回収したように、
私の悲しく割れた心もどこか遠く、Goが捨てられた所まで持っていってくれればいいのに。そんな気持ちを湯船に浮かべた。