秀策には奥ゆかしいところがあって、持ち上げられるうちに評価が高いまま
固まったというのはあるのだろう。しかし、そもそも棋譜でその強さを判断するのは
極一部の人間だけができることだから、俺たちは評判をある程度信じるしかない。

ただ、秀策が優しく二十番碁を打った関山の爺さんに、容赦なく思いきり勝ち越した
秀甫の話などを読むと、お前空気読めよと思ってしまう。そういう余裕のなさは
決して印象を良くしない。

三秀の実力は、全盛期同士となると比較が非常に難しいと思うが、実際は
秀甫を一番に挙げる人がかなり少ない。天保四傑や四哲の全盛期、
円熟期を戦った秀和、秀策とは比べにくい面が確かにある。だが「なんとなく」
秀甫は一段落ちると考えている人も少なくないのではないかな。