【2007年5月11日 読売新聞朝刊(岡崎裕哉)】

日本棋院の小林光一九段(54)が副理事長職の辞表を提出した。辞表は常務理事会で
預かりとなっているが、辞意は固い。後任は大竹英雄九段(64)を軸に調整が進められている。
小林九段は昨年7月、岡部弘理事長(69)の指名で副理事長に就任。
棋士トップの理事として棋院経営の中枢を担う立場だった。棋院は加藤正夫前理事長の時代から、
経営立て直しに突き進んでいる。一に赤字解消、二に赤字解消である。加藤氏の急逝後、
デンソー会長の岡部氏を理事長に迎え、"ドンブリ勘定"体質からの転換は確実に進展している。

岡部執行部は公益法人の健全化を図る公益法人制度改革を控え、
残された時間は少ないという認識で、企業感覚で実務的に財務体質の改善に取り組んでいる。
万年赤字だった財政も荒業を繰り出してようやくギリギリの黒字化に持ち込むことに成功した。
会員が減少し収入増が見込めない現状では、できることは何でもやるという姿勢だ。
一方で、厳しいリストラに職員は戸惑いを隠せない。

こうした財政再建第一主義の下で、小林九段はその存在感を十分に示す場に恵まれなかった。
もどかしい思いもあったろう。常務理事会の中で盟友的な立場にあった酒井猛九段(59)が
今年3月辞任した際も辞意を漏らしていた。ただ、現路線は将来的に小林執行部を
視野に入れたものだっただけに、今回の辞表提出は残念というほかない。大竹九段は囲碁界の重鎮。
棋院に今求められているのは何か。執行部、棋士、職員が共通認識を持つ体制作りを進めてほしいものである。