'87年7月 広告批評 特集ファミコン大研究 (2) 鳥山明 すぎやまこういち 中村光一 インタビュー - ドラゴンクエストとその時代 DRAGONQUEST AGE
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すぎやまこういち(ドラクエの音楽)

ゲーム音楽には、根本的な規制がいろいろあるんですね。まず、同時に最大限三つの音、三声しか
出せない。場所によっては二つです。言わば無伴奏三部合唱ですね。二つ、または三つの音で、
メロディ、ハーモニー、リズムというすべてのことを表現しなければならない。それから、パソコンの
場合は本体の中にFM音源が組み込まれてますから、同じ三声でも少し音的にいろいろできるん
ですけど、ファミコンの音源はPSG、プログラマブル・サウンド・ジェネレーターというある種の
シンセサイザーで、これは音色的な変化があまりつけられないんです。

とは言っても、これは僕の信念なんですが、サウンドがどうあれ、いいものはいい。逆に、つまらない
メロディは、サウンドをいくら凝ったって、やっぱりつまらないんです。いまは世の中サウンド志向で、
やたら厚化粧の音楽が多いでしょ。ゲーム音楽はサウンド的な厚化粧がまったくできない分、メロディ
自身のよさがストレートに問われるんです。ごまかしがきかない。だから逆に、作曲家としてものすごく
やりがいのある、挑戦しがいのあるものですね。

「ドラゴンクエスト」はIもIIもオーケストラをつけてレコードを出して、そちらもずいぶん売れたんですよ。
そういうふうにいいレコードができるというのはとてもうれしい。だけどやっぱりゲーム音楽の一番大事な
基本は、ゲームそのままの状態でいい音楽でなければならないということですね。アレンジバージョンが
いくらよくたって、ゲームの中で流れる音楽が貧弱じゃしようがない。