本拠地、益州で迎えた劉備戦
先発冷苞が敗走、トウ賢も勢いを見せず惨敗だった
成都に響く文官どものため息、どこからか聞こえる「これで益州は劉備のものだな」の声
無言で降伏し続ける武将達の中、蜀の名将張任は独り陣で泣いていた
劉璋軍で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できる武将たち・・・
それを今の蜀で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」張任は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、張任ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たい椅子の感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰って調練をしなくちゃな」張任は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、張任はふと気付いた

「あれ・・・?援軍がいる・・・?」
陣から飛び出した張任が目にしたのは、地平線まで埋めつくさんばかりの援軍だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのように銅鑼が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする張任の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「張任、単独で戟兵だ、早く出ろ」声の方に振り返った張任は目を疑った
「げ・・・厳さん?」  「なんだ張任、居眠りでもしてたのか?」
「り・・・故・劉焉さま?」  「なんだ張任、かってに劉焉さまをご逝去させやがって」
「呉懿・・・」  張任は半分パニックになりながら旗を見上げた

厳顔 李厳 呉懿 張任 劉焉
法正 冷苞 張松 トウ芝 李恢

暫時、唖然としていた張任だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
雷銅から戟を受け取り、劉備軍へ全力疾走する張任、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、金雁橋で斬首されてる張任が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った