「ええぃ、くそ! またわしは修行じゃ!
 まだ未熟者扱いか! いつになったら戦に出れるのじゃ!?」
「殿は希代の御方、お主ではまだ力不足と判断されたのじゃろう。
 殿もかつては修行に明け暮れ、日々鍛錬なされたと聞いておる」
「ふん、どうだか。大方殿の吹聴でござろう!」
「いや某も国友殿から聞いたことがある。何でも殿は銃を極められたとか」
「おお拙者も聞いたことがありますぞ、稀代の射手六角殿から奥義を伝授されたと」
「そういえばわしも吉岡殿から聞いたことがあります。吉岡流の免許皆伝を授かり、
 朝山殿からも古今伝授の御墨付を頂いたとか」
「それでしたら私も堺の茶人千宗易殿から、殿の腕前は茶聖に匹敵すると。
 それと納屋殿から目利きの術を伝授されたとか」
「確か殿は半兵衛殿より兵法の極意を学び、官兵衛どのから鉱山築城の極みを。
 あの明智十兵衛殿からも説法を習ったとか」
「これは眉唾なのだが…殿は南蛮商人とも仲がよく様々な南蛮技術を学んだとか」
「拙者も噂でしか聞いたことがないのだが忍びも極めたとか」
「そういえば殿は航法を学び大海原を自在に駆けるとか」

「…」「……」「………」「…うちの殿様、何者だ?」「わからん」

ジャーンジャーンジャーン ブフォ〜ブフォ〜

「何じゃ、この音は!? 敵襲か!」
「馬鹿者! 殿が戻られたのじゃ! 皆の者、評定の準備を行え! 遅れるな!」
「な、何ぃ!? 馬鹿な、評定は普通二ヶ月に一回じゃろう!」
「愚か者! 殿は戻られぬときは一年は戻られぬが、我らが主命を果たす一月、
 場合によっては二回評定を行われるのじゃ!」
「な、なんと凄まじい…、これが当家の強さの正体か。…わし、任官先間違えたかのぅ」

ドジャーンドジャーンドジャーン フフォフフォフフォ〜ゥ(ワァァァァ)

「こ、今度はなんじゃ!?」
「む、病人じゃと。皆の者、すぐさま帰宅せよ! 殿の武家参りじゃ!」
「それは一体如何なる行事か?」
「お主は勧誘組じゃったの。武家参りは、殿がじきじきに家臣の家を訪れ親交を深め、
 あるいは技能を学び、または病気を治療されるのじゃ」
「なんと殿が直々に治療を!? すごいところじゃのう、ここは」
「しかしそれは表向き。直々に病気を治療し、我らの病欠を許されぬのじゃ」
「……わし、逐電しようかな」

【下に〜下に〜、殿の回診武家周りなり。下に〜下に】