ホムラよりニアがレックスと結ばれるべき100の理由 その3 レックスへの想い編

エルピス霊洞でレックスに想いを打ち明けたニア。
マンイーターである事をバラすのは怖かった。
もしそれが理由で大好きなレックスに嫌われてしまったら、今度こそ本当に居場所がなくなってしまうから……。
でも全部杞憂だった。レックスや、他の仲間たちもブレイドである自分を受け入れてくれた。
素敵な仲間たち、つい勢いで恥ずかしい事も口走ってしまった、気持ちを伝えられただけで胸のつっかえは取れたし、今はすごくすっきりしてる。
アタシはレックスと共に楽園へ行く、もう隠しっこはなし、彼はアタシの全て受け入れてくれた。だから……、いつか叶うといいな、この想い……。
―――数時間後 モルスの断崖
シンと刃を交わしあう、レックス。
このままでは負けてしまう。レックスに想いを伝えられたばかりなのに、全てが終わってしまう。
この状況を打開できる奇跡の一手がないか、必死に思考を巡らせてる、そんな時だった。
「目の前で泣いてる女の子を放っておけるわけないじゃないか!!!」
突如レックスが叫んだ。
女の子……、アタシの事?一瞬胸が高鳴ったがすぐに勘違いであると気が付く。
「レックス、あんた、今ホムラと喋っているの?」
ニアの問いかけはレックスの耳には届かなかった。だが分かる、今レックスはホムラと言葉を交えている。
元々イレギュラーな事だらけの天の聖杯との同調、人知の及ばぬ事が起こっても不思議ではない。
「それじゃあ意味がないんだ!!俺は君と行きたいんだ!楽園に、君と二人で!!」
君と二人でか……。
そう叫ぶ彼の瞳に自分が映っていない事は明らかで、行き場のない寂しさがこみ上げた。
「俺は君の為に楽園に行く!!!【君一人だけ】の為に楽園に行ってみせる!!!」
君一人だけの為……。
――楽園の存在が証明されればそんな争いもなくなるかもしれない、ニアはドライバーだろ、力を隠してくれると嬉しい
レックスに楽園を目指す旅へと誘われた時の言葉を思い出す。
緑溢れる天空の大地……、そんな素敵な場所が本当にあるのなら、自分の居場所だってそこにあるに違いない。
彼に誘われ、お互い理想郷『楽園』を夢見て、同じ目的を持って、同じゴールを目指して旅をしているつもりだった。
だけど違った。今のレックスにはホムラしか見えていない。彼はホムラの望みを叶える為だけに楽園を目指している。
薄々は気が付いていた。今や彼の本願は全てホムラを幸せにする事に傾倒している事に。
楽園見つけるという目的は変わらずとも、レックスの旅の動機の変遷はニアの胸に突き刺すような痛みを与えた。
アタシはレックスの恋路に協力する為に、旅をしたかったわけじゃない……
思ってはいけない負の感情が沸いてでてくる。
「俺は君の為に二度と世界を焼かせない!だから君の全てを俺に、この俺にぐれぇえええええ!!!」
ニアの想いに冷や水を浴びせるかのようなレックスの咆哮。
『一緒に突っ走ろーじゃないか』
ついさっき、レックスと約束をしたはずなのに、その決意は既に崩れかかっていた。
エルピス霊洞での彼と今の彼、心に宿す熱意が違う、その明らかな差はニアの恋心を玉砕させるに十分な衝撃を秘めていた。
出来る事なら……、もっとアタシを見て欲しかったな……一人で感傷的になって、過去を語って、正体を明かして……。
レックスはこんなにホムラを大切に想っている。自分がつけ入る隙は微塵もない。
それなのに勝手に舞い上がって告白までして
「はは、とんだピエロじゃないか、アタシ……」
レックスが今ホムラに向ける熱い想い。その情熱が自分に向けられる事は二度とないという、生々しい現実を直視し涙が溢れだしそうになる。
しかしぐっと堪え、壊れそうな心を奮い立たせ、彼女は地面を踏みしめた。
折れかけた心を持ち前の忍耐力によって再起させ、彼女は臨戦態勢に入る。
ニアに芽生えた恋の芽は今ここに消滅した。
今の彼の姿を見た上で、まだ諦められないというならそれはもはや罪深くすらある。
レックスの事を諦めるのは心が抉られるように辛いよ……。
でもね、それでも……、彼はアタシに居場所を与えてくれた。
例えこの恋が実らなかったとしても、それ以前にレックスとホムラは大切な仲間だッ!。
レックスが好きだからこそ、彼の為に最後まで戦い抜いてやる!!これはアタシ自信の戦いでもある!!
ありがとうレックス、少し辛い時もあるけれど、自由に生きる事を教えてくれたアンタの為にアタシは戦い抜いてみせるッ!
彼女の脳裏にはあの日、グーラ基地で手を差し伸べてくれたレックスの姿がうつっていた。