これじゃ日本で続編出なくても仕方ないか。

それは――「日本人は3D Free Roaming Exploration(3次元空間を自由に探検する行為)を
好きではないのかもしれない」という説です。
あれは今から5年前。私が、Insomniac Gamesと一緒に「スパイロ・ザ・ドラゴン」という
ゲームを制作していた頃、私達の頭を悩ませていたのが、まさに「ゲーム酔い」です。
私達はゲームを制作する上で、ユーザーテストからのフィードバックを何よりも
重視するのですが、スパイロを日米欧同時にテストすると、日本でのみ必ず、
かなりの割合の人間がめまい眩暈や吐き気を訴えていたのです。
――いやもう大変でした。原因を調べようにも参考になる文献は見つからず、
人種的生理的な違いに拠るものかと思いきや、アメリカに転勤した日本人家庭の子は
酔わなかったりと、現象に法則性すら観られない。私達は、原因の解明を諦め、
カメラの改良に集中する事にしました。偶々、私がゲーム酔いしやすい体質だったので、
自らを実験台とするのは無論の事、「人体実験は止めてください」と非難されながらも
試作カメラのテストを敢行したり、酔ったプレイヤーのビデオを数十時間、
私自身も吐き気を堪えて精査したり…。
最終的に私達は、「日本人の90%以上が酔わないカメラ」を完成させ、
ソフトをリリースしたのですが――今から考えると、一つの問題に囚われるあまり、
その奥に潜む真の問題に気付かなかったのかもしれません。
スパイロは「ルート探しの楽しみ」を企図したゲームなのに、発売後の意見では、
なんと「ルート探しが面倒」「マップで指示してほしい」という意見が非常に多かったのです。
それも日本でだけ! 欧米では、そのゲーム性が受け入れられ、大ヒットしたのですが、
日本でのセールスは惨憺たるものでした。

http://www.0600design.com/archives/2003/02/