「だいち…でも…」

ブルゾンみきおは恥ずかしそうにうつむきます,

しかしサルは、ブルゾンの肩を優しく撫でながら

「もとやまの雪が溶けるのを見たことがあるかい?」
「もとやまの雪が?」

そう答えるやいなや、サルの手がブルゾンのしっぽを柔らかく撫でました。

甘美な痺れに、ブルゾンは思わず声をあげますが、階下のバームやかほこママのことを思い出して、手を口に当てました。

「ほら、もうこんなになってるじゃないか、みきおのもとやまが」

ブルゾンは体をよじって逃げようとするのですが、サルの細くて鍛えられた腕につかまれて、逃げることができません。

「みきお? もとやまの雪を溶かしてみるかい?」

サルがブルゾンの目を見つめています。

ブルゾンもサルの目を見つめています。

二人の眼の中に、二人だけが映っています。

もとやまに、冬の風が吹いていました。