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━ジュエリーデザイナーから投資銀行家に転身した僕の妻の売却体験━

 手前みそな話だが、僕だけでなく僕の妻も、起業して会社を売却している。
 僕の妻は、僕と同じく名古屋の生まれだが、中学校を卒業後すぐに上京した。会社を作ったのは21歳の時だ。
それまではジュエリーデザイナーの仕事をしていたのだが、ラスベガスのジュエリーショーに行ったときに、一目ぼれしたアクセサリーブランドがあったようだ。

 このジュエリーは、どのようなものかというと、いわゆる「トラベルジュエリー」というものだった。
 ハリウッドの女優や大富豪のマダムは高価なジュエリーを好む。
しかし、数千万円、時には1億円を超えるような本当に高価なジュエリーを実際に着けていると、紛失したり盗まれてしまうリスクが大きい。
そこで、高価なジュエリーは銀行に保管して、普段は精巧に作られたフェイクジュエリーを身に着けているのだ。
そして、そうした文化は大富豪のセレブやマダムたちだけではなく、一般の女性たちの間にも浸透してきており、旅行やスポーツ、
仕事の際には高価なジュエリーや時計をせずに、フェイクジュエリーを着けるというライフスタイルが流行ってきていた。

 もちろん、フェイクジュエリーだからといって、安っぽいものを身に着けるわけではない。使っているのは人工ダイヤモンドだが、つくり自体は高価なジュエリーと全く同じだ。
 例えば、裏から光が通るように穴をあけたりとか、カットの細かい石を丁寧に並べたりする技術は、ハイジュエリーと何ら変わらない。
このような「遊び」ジュエリーが、ジェットセッター的なライフスタイルを好む大人の女性たちの間で流行っていくだろうと、僕の妻は予測したらしい。
僕の妻は、このブランドホルダーの会社に連絡をして、日本国内での独占販売権をくれないかという交渉を持ちかけた。しかし、相手からの音沙汰はなかった。
当然といえば当然だ。会社も作っていない、ビジネスの実績もない、言ってみればただの女の子だ。
独占販売権を付与するのなら、大手の販売ネットワークをもっているところか、商社などときちんと契約したい、というのが相手の本音だろう。