小学生のころ地域で有名人のサンバイザーおじさんを見に行ってきたんだ。
廃コンビニにいて、みんな小銭やら鬼ころしパックやらお供えしていくんだ。
ボロボロの風体だけど福の神だ、なんて呼ぶ人もいた。

禿げててガリガリで、お喋りが好きみたいで、広大な土地の地主でね、とか車3台持ってて、代々社長で、家が女だらけでさぁ、とか嘘みたいなことずっと楽しそうに話して。
でも歯がないから何言ってるか聞き取りにくいんだ。

自分も500円投げたら「次はイーサリアムでお願いね」って言われてムカついた。その日から話しかけるのはやめた。

あるひ塾の帰りにおじさんが倒れてるの見つけて、救急車呼んだけど遅かった。
身元引受人というのがいないらしくて、京都から知らないおじさんが来て骨を持って帰ってた。
今でも同窓会でサンバイザーおじさんの話が出たりするよ。
でもあれ、自分の記憶だとサンバイザーじゃなくて、破れててっぺんの空いたハンチングだったんだ。