我々はさらに、主権通貨には 「土台」が必要であり、就業保証プログラム(JGP)における基準賃金の設定によって、プログラム自体がその土台となると考えている。例えば、JGPの賃金が時給15ドルに設定されれば、15ドルで1時間分の労働力を購入できる。JGP賃金が安定している限り、そしてJGPで働く労働者がいる限り、JGPの賃金よりも数セント高い賃金で、雇用主はプログラムから新規の労働者を募集することができる。
 就業保証プログラムは、通貨を「裏づける」1オンスの金(きん)よりもずっと有効な土台であると我々は考えている。労働力はあらゆる財・サービスの生産に投入されるので、労働力の緩衝在庫は金の緩衝在庫よりも経済を安定させるのに有効である。
さらに、労働者の所得は、最終消費財に対する需要の最も重要な源泉である 。従って、完全雇用状態で、そして緩衝在庫就業プログムラムの比較的安定した賃金を利用して経済を運営することが、消費支出と家計所得の安定のみならず、賃金、それゆえ物価を安定させるのにも有効である 。

 「政府は、インフレを引き起こすことなく完全雇用を追求すべきだ 」というのがMMTの政策規範であり、そうするのに就業保証プログラムほど良いプログラムは見つかっていない、というのがケルトンの主張である。従って、我々はMMTの説明からこの政策提案を切り離すことができない。それどころか、MMTは規範も説明もはるかに超えたものである。MMTは、経済を全体として理解するための首尾一貫したアプローチを与え、貨幣の「本質」の理解から始まる「世界観」を提示する。

Larry Randall Wray