>>569
物価と価格だけではなくCPI(消費者物価指数)とデフレーターの違いを知っておいた方が良いぞ

実質賃金を押し下げる交易損失問題
~賃上げでは解決できない難題~
ttps://www.dlri.co.jp/report/macro/255740.html

消費者物価の伸び率が高く、GDPデフレータの伸び率が低いとき、交易条件は悪化する。理由は、輸入価格が上がると消費者物価はコストアップで上昇し、GDPデフレータの方はコスト転嫁ができずに下がるからだと説明される。デフレータは需要本位の価格指標なので、コストアップを価格転嫁ができず、需要が下がって価格下落と計測される。

実は、GDPデフレータと消費者物価のギャップは、輸出入価格の変化を間接的に反映するのである。このギャップは広がったり、狭まったりする。例えば、輸入価格が上がるとき、同時に輸出価格も大きく上がっていれば、交易条件の悪化はより小さくなる。海外で物価が上がるとき、日本の輸入価格も上がるが、輸出企業がそれを輸出価格にコスト転嫁すれば、交易損失は小さくなる。おそらく、そうした価格転嫁は十分に進んでいないと考えられる。

先に計算したGDPデフレータ/消費者物価(除く帰属家賃)の変化は、日銀の輸出価格/輸入価格で計算した相対価格変化(これも交易条件と言う)とほぼ一致している(図表4)。さらに言えば、GDP統計で計算した交易条件ともかなり強く連動している(図表5)。

結局、「なぜ、実質賃金が下落するか?」という難題への答えは、交易条件が悪化しているからだと説明できる。1970年代のオイルショックのような輸入インフレが起こっているとき、購買力が海外流出するから、一見、賃上げで購買力が上がったように見えても、実質ベースではマイナスになっているのだ。

(注2)交易条件とは、交換条件だといえばイメージしやすい。輸入品と輸出品の交換条件は、円安になると、輸出品の相対価格は安くなって、割高になった輸入品との交換数量は少なくなる。交換条件は悪化するかたちだ。円高になると、輸入品は安くなり、交換条件は改善する。