5.日本の経験はMMTの考え方をどのように形作ったのか

1990年代以降の日本の経験は、主流派のマクロ経済学がラカトシュ的な意味での退行的パラダイム [2] である理由を示している。1980年代、日本は当時の行き過ぎた新自由主義を受け入れ、民間債務の大幅な増加や投機的な資産バブルなどに見舞われていた。続いて1991年に起こった商業用不動産の暴落は、多額の財政赤字と公的債務の継続、日銀による大規模な国債購入、ゼロ金利の金融政策など、政府の本格的な対応を必要とし、財政・金融政策を極限まで押し進めた。図表2は、こうした政策転換に関連して主流派の経済学者が行った予測と、その後に起きた現実を比較したものだが、

【主流派経済学者による予測はどれも的中しなかった。】