通貨主権を保てている国家には米国、英国、日本、オーストラリアなどが挙げられますが、これらの国家にとって財政赤字が積み重なってできた公的債務は、世間で言われているほど、危険なものでも、無責任なものでもありません。

財政赤字とは何でしょうか。それは単純に言えば、国家が毎年、経済に支出している金額と国家が租税などで得ている金額の差です。年度の終わりに収入の額から支出の額を引いたとき、マイナスになれば財政赤字だということになります。

さて、これは実際に何を意味するのか。それは政府がその金額を、家計や企業などの民間部門に渡しているということにほかなりません。つまり、米国政府にとっての赤字は、米国民にとっての黒字だというわけです。

財政赤字に不安を抱くというのは、国家が民間部門を黒字にすることに不安を抱くのと同等の話です。国家が支出するというのは、誰かの銀行口座にその金額が入り、その人がそのお金を使えるようになるということなのです。

世間の人は「公的債務」という語句を聞くだけでネガティブにとらえがちです。それは公的債務とは、自分たちの借金であり、いずれは増税か歳出削減のどちらかで返さなければならないお金なのだという説明を刷りこまれてきたからです。

しかし、公的債務とは、国債という形をとった国民の貯蓄の一部であり、国民の富の一部なのです。米国に財政赤字問題は一切ありません。通貨主権を保てている国は、どこも財政赤字問題など抱えていないのです。

国民が望めば、いつでもキーボードを叩くだけで、すべての債務を即時に支払えます。公的債務についてはPRの失敗がありました。使っている用語が悪いのです。

Stephanie Kelton