物価が上昇したアメリカでは、生活が貧しくなった 「物価上昇で景気も良くなる」の根本的な誤解 、中原 圭介
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たとえば2000年以降、金融危機が起こるまでのアメリカが2%のインフレ目標を達成できていたのは、決してFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策が成功していたからではありません。
たしかに、アメリカの消費者物価は2009年以降、FRBの物価目標である2%を下回っている年が多いものの、2000年以降では年平均で2%の物価上昇を達成することができています。
2000年の消費者物価指数を100として計算すると、2017年は実に142にまで上がってきているのです。
経済学的には物価の上昇は「良」とされているので、アメリカはまさに経済の優等生であるといえるでしょう。

しかし、私たちが見誤ってはいけないのは、このようなアメリカの物価上昇は国民生活が向上することによって達成されたわけではないということです。
本当のところは、中国の急激な経済成長に伴い原油の需要が急拡大し、主として原油価格が高騰することによって起こったものなのです。
その証拠として、アメリカの物価指数を項目ごとに分解して見ていくと、物価の本当の姿をとらえることができます。
すなわち、2000年以降で特に物価上昇が激しかったのは、主としてガソリン、電気、食料などといった生活に欠かせないモノばかりだったのです。

富裕層や裕福な中間層より下の人々にとっては、正味の実質所得は統計上の実質所得よりも1〜2割くらい落ちていると考えられるのではないでしょうか。
少なくとも2000年以降のインフレは、アメリカの景気拡大によるインフレというよりも、人々の生活水準を押し下げたインフレであったという要素のほうが強かったといえるでしょう。

ただ、2000年〜2007年にアメリカ国民がそれを認識できなかった背景には、住宅バブルがそれを覆い隠していたという事情があります。