人口減少は経済成長を促す要因にもなりうる

歴史を見ても、人手不足が技術進歩を促進させる

 人手不足によって技術進歩を加速させた経験を、日本はすでにもっています。典型的なのは、1980年代のFA化(ファクトリー・オートメーション)です。
当時、日本の経済の規模はかなり大きくなり、海外展開をするようになってきましたが、団塊の世代とそのジュニア世代の狭間で、若い労働人口が減少した時期でした。
人件費の高騰対策と、人手不足を補うために、日本各地の工場は一斉に無人化に取組み始め、日本の工場の自動化技術は大きく発展しました。
工場が無人化を目指すことで工作機械メーカーが潤い、研究開発に積極的に投資する余裕が生まれ、その結果、さらに優れた技術開発が促進するという好循環が生じたのです。

こうした例は日本に限りません。産業革命を起こしたイギリスも、当時は世界中に植民地を展開し、市場を拡大させていく中で、生産力を上げるためには人手不足となったことが、工場機械工業を設立させた要因のひとつだとする研究もあります。

 このように、成長会計の手法で経済成長の要因を分析すると、労働力の減少によるマイナスはあるものの、その労働力の減少によって起こる技術進歩は、労働力の減少によるマイナスを補って余りある効果を生み出す可能性があるのです。

http://www.meiji.net/life/vol117_yasuyuki-iida/2