アベノミクスやっと地方に波及、景気拡大が持続も懸念は人手不足 日銀さくらリポート
2018.1.15 20:52

 さくらリポートでは、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」が地方にも順調に波及している状況がうかがえる結果となった。今後も当面は景気拡大局面が続くとみられるが、懸念されるのは深刻化する人手不足だ。
人手不足には賃上げが進みやすくなるというプラスの側面もあるが、賃上げと同時に値上げも実現できなければ、せっかく持ち直した企業収益を圧迫しかねない。景気の好循環が作れるか、日本経済は正念場を迎えている。

企業業績は好調だ。経済産業省がまとめた昨年7〜9月期の全国の鉱工業生産指数は6四半期連続で増加。景気の恩恵が届きにくかった百貨店やスーパーでも、販売額が前年を上回る地域が増えている。
帝国データバンクがまとめた12月の景気動向調査でも、全国10地域のうち9地域で景況感が改善。6地域で景気が「良い」と答えた企業が、「悪い」と答えた企業を上回った。

 さくらリポートでも「来年度の設備投資額は過去最高を更新する見込み」(広島の自動車関連)、「1人当たりの購入額が一段と増加している」(大阪の百貨店)など、幅広い地域・業種で景気の恩恵を感じている企業の声が目立つ。

 日銀はこうした企業の好業績を背景に人手不足が賃金を押し上げ、それが価格に転嫁され、経済の好循環が生まれるというシナリオを描く。

 ただ、人手不足は賃上げに十分に結びつかず、黒字の企業も浮いた利益を内部留保として積み上げる傾向がある。仮に賃上げが広がったとしても、企業が商品やサービスの価格に転嫁できなければ、企業収益が圧迫され、景気を冷やすことにもなりかねない。

 景気に対してプラスとマイナスの両面を持つ人手不足を、景気回復を確実なものにするための材料としてとらえられるか、各企業の姿勢が問われている。

http://www.sankei.com/smp/economy/news/180115/ecn1801150041-s1.html