【島倉原】雇用情勢を巡る歪んだ報道
https://38news.jp/economy/11250

例えば就業率を過去の水準と比較するなら、上記のような15〜64歳人口での比較は
適切とは言えません。仮に、50年前と今の就業率が同じなら、
進学率や定年年齢の変化、あるいは女性の社会進出などの影響を加味すれば、
今の方が50年前よりも実態は悪いはず。
特に、女性の就業率の高まりは、配偶者の所得だけでは家計が苦しく、
むしろ雇用環境の悪さを反映した部分もあるからです。

社会変化の影響を極力排除するのなら、比較対象は25〜54歳の男性が適切。
というわけで、25〜54歳男性の就業状況を見てみましょう。
就業率は確かに上昇傾向ですが、長期デフレによって大きく落ち込んだ
2000年以降の水準にとどまっています。
他方で、2008年のリーマン・ショックで一段と落ち込んだ就業者数は、
その後の減少傾向は全く変わっていません。

これは、就業率の上昇をもたらしたのは企業側の雇用意欲の高まりではなく、
人口減少の結果であることを示しています。
しかも、就業率自体もデフレ以前より大きく落ち込んだままであること、
さらには実質賃金の低迷を踏まえれば、雇用意欲は高まっているどころか、
むしろ低迷しているというべきでしょう。

デフレと経済の長期低迷をもたらしたのは、民間の所得を抑圧する緊縮財政。
この20年にも及ぶ失政を続ける限り、真の意味での雇用情勢の改善は、
実現に程遠いのではないでしょうか。