PRESIDENT 2020年5.29号
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日本よ、対経済ショックは過去の大失敗から学ぶんだ ◇高橋洋一・嘉悦大学教授

 城山三郎著『男子の本懐』で濱口首相は、東京駅で銃撃され、非業の死を遂げた英雄として描かれている。
その大前提として、立派な経済政策を遂行したことがある。
 筆者は、40年前、大蔵省(現財務省・金融庁)に入省したが、新人研修においてこの本を読み、感想文を
書かされている。筆者以外の同僚は、信念に基づき命をかけてまで打ち込むことは素晴らしいというものだった。
しかし筆者は、金解禁つまり金本位制への復帰をなぜ行ったのかが理解できなかった。そのため、正しいか
どうかわからない政策に命をかけるのはいかがなものかという感想文を書いた。その当時に金本位制に復帰
することはすなわち金融引き締め政策であり、緊縮財政とセットで行う「しばきあげ」政策は、失業を増加させ、
マクロ経済運営において問題となったはずだからだ。ユニークな感想だったため、筆者は同僚の前で先輩教官に
面罵された。この教官はその後事務次官になった。さすが、緊縮財政の権化である財務省ならではの人事だ。