経済論議の三不思議
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO83433650Z10C15A2EN2000/

 最近の経済論議で不思議なことが3つある。

 第1は、アベノミクス第1の矢の低評価だ。
日銀の金融緩和政策については、いまだに誤解や低評価が絶えない。

 日銀のインフレ目標設定を「気合インフレ率」と評する向きもあるようだが、現在の日銀が行っている政策は世界の他の中央銀行が実行しているものだ。
金融政策の目標は物価予想に働きかけることであり、だからこそインフレ目標を標準装備として各国の中銀はデフレ懸念がある時には非伝統的といわれる政策を実施している。
1月22日に欧州中央銀行(ECB)が量的緩和政策に乗り出したのは例外ではない。

 確かに消費増税と原油価格下落の影響を見誤ったのは日銀の責任である。
しかし、こうした過ちは取り戻すことができる。追加緩和をしたことは正しい。

 また追加緩和の副作用が目立つという意見もあるが、それは何か。
就業者が増え、失業者が減り、倒産件数が減っている。
円安で企業収益は好調であり、国内生産回帰の動きも起きてきた。
これを金融政策の成果でないと言うことは難しいのではないか。

 不思議の第2は論壇での消費増税の論じ方だ。
まるで腫れ物に触るかのごとき取り扱いである。
例えば2月16日に発表された国民経済計算の一次速報では、内需、ことに消費、設備投資、住宅投資の回復の遅れが顕著だった。
他方、輸出は伸びている。

 普通に見れば、消費増税の影響が長引いている一方、輸出については円安の効果が出てきたとなるはずだ。
現に英フィナンシャル・タイムズ紙の17日付記事は、消費の弱さの原因として消費増税の影響を指摘している。
しかし、我が国で消費増税の負の効果に触れる解説が少ないのはどういうことだろうか。