ある程度大きい公共図書館には必ず一匹は住んでいると言われる「ヴェテ」
歳の頃は40代半ば 中には白髪混じりの者もいる
30代という若い者もいるようだが、総じて不健康な生活が祟り年齢は不詳である
こういった中高年の司法試験受験生、あるいは国立医学部再受験生を総称して「ヴェテ」と呼ぶ
「ヴェテラン」を揶揄しての呼称と思われる

ヴェテの朝は早い
図書館の席を確保するために開門前から並ぶ
ヴェテにはお気に入りの席があり、事情を知らない者が知らずに座っているとどけと言ったり横に座ってブツブツ独り言を言ってキモがらせるという技を使って席に座る
席を確保すると徐にコーヒーなどを汲みに行き、まず朝の一服
飲み終わると「シャッ!」などという奇声をあげて学習開始
ボロボロになったテキストを読み始める

最近は目も霞んで字もよく見えない
文字を追いかけるが脳も劣化しているため頭に入ってこない
何度も同じページを繰り返し、遅々として進まず、そうこうしているうちに昼時になる
ママに貰ったお小遣いで館の食堂に行き、カレーやラーメンなどを食す たまにAランチ
食後のコーヒーを飲み終えると午後の学習開始だがすぐに血糖値が上がってうとうとし始める
午後はだいたい睡魔との戦闘に費やされる

外も暗くなり、人影も減り始めると帰り支度を始める
中には図書館に「通勤」しているヴェテもいる
コンビニで夜食のお菓子を買い家路につく
もうこんな生活を始めてン十年になる
親はとっくに諦めている